“南イタリアの楽園”で作られる服、

「サンタニエッロ」の着心地

イタリアにある「サレルノ」という街をご存じでしょうか? ナポリから南に40kmほど下ったところに位置するサレルノ県の県都で、海と山に囲まれた湾岸都市。“世界一美しい海岸”として有名なアマルフィ海岸もサレルノ県に含まれています。風光明媚で治安もよく、眼前に広がるティレニア海で採れた新鮮な魚介料理を堪能できるサレルノは、さながら南イタリアの楽園。そんな幸福に満ちた場所で作られるテーラーリングブランド「サンタニエッロ」の魅力をご紹介します。

ナポリ仕立てとも一味違う、

独特のテーラリングが生まれる街

仕立て服の聖地と呼ばれるナポリと同じカンパニア州に属するサレルノは、ナポリ同様繊維産業が盛ん。そんな当地でもひときわ高いクオリティとセンスを誇るファクトリーブランドが「サンタニエッロ」です。そのテーラリングは、軽く柔らかい着心地という点においてはナポリと共通しつつも、華やかさ・艶めかしさを前面に打ち出すナポリ仕立てとは一味違い、控えめで品のいい作風が特徴。ナポリよりのどかで平和的な気候風土、穏やかな人々といったサレルノの土地柄が反映されているかのようです。
例えば袖付けの縫製を見ても、大きなギャザーを入れて視覚的な柔らかさを強調する手法が多用されるナポリと違い、非常にクリーンな仕立てをしています。そんなサンタニエッロの美学を、ファクトリーを訪ねて探ってきました。

サンタニエッロの服を着ると

“全身が美しく見える”理由

スーツ、ジャケット、パンツを手かげるサンタニエッロは、全身のスタイルを美しく見せてくれる非常にバランスの良いシルエットが高い評価を集めています。その理由は、ブランドの生い立ちと密接な関係が。ここでその歴史を紐解いてみましょう。
「サンタニエッロ」というブランドが始動したのは1991年ですが、その母体であるファクトリーが創業したのは1968年のこと。ジャケット職人ビアジョ・サンタニエッロ(上写真・左)と、その妻でありトラウザーズ職人でもあったカルメラ の夫婦によってスタートしました。スーツブランドの多くはジャケット作りを主眼に置く傾向がありますが、サンタニエッロはその出自ゆえ、創業当初からパンツ作りにもジャケットと同等の力を注ぎ、研究を重ねてきました。それがジャケットとパンツの一体感を生み、全身を美しく見せるシルエットに繋がっているのです。
このようなモノ作りのベースに、創業者夫婦の息子アントニオ(上写真・中央)によって洗練されたデザインと生地提案力が加わり誕生したのが「サンタニエッロ」というブランド。アントニオが両親から受け継いだテーラリングの素養と、美しいサレルノの地が育んだ豊かなクリエイティビティがサンタニエッロのエッセンスなのです。
ファクトリーには50代のベテランから若手まで、様々な年齢層・キャリアの職人たちがその技を振るっています。
創業者ビアジョ&カルメラ夫婦も今なお現役でファクトリーに入り、職人たちに様々なアドバイスを与えています。アントニオがデザインしたコレクションを、両親が率いるファクトリーで形にしてきます。
ファクトリーは伝統的な手作業のテーラリング技術もしっかりと継承していて、ジャケットやパンツ作りの要所においてその技がいかんなく発揮されています。穏やかで実直なサレルノの人々が手がけるからこそ、控えめながらも存在感ある上質な仕立てが叶います。
デザイナーであるアントニオ・サンタニエッロは生地表現にも並々ならぬ情熱を傾けています。特に「ティント・イン・カーポ」と呼ばれる製品染めのコレクションでは、様々な素材を何度もテストし、発色や風合い研究しながら新作を開発しています。
膨大な生地サンプルを前にして試行錯誤するアントニオ。その努力が実を結び、近年はイタリア最大規模の国際服飾見本市「ピッティ・ウォモ」にも出展するほどの躍進を遂げています。

ラ ガゼッタ 1987が提案する、
サンタニエッロ今季の着こなし



製品染めジャケットを

今季トレンドのリゾート調に

「ティント・イン・カーポ」(イタリア語で製品染め)コレクションによるダブルジャケットは、リネン+ウール+コットンの涼やかな三者混生地を製品染めすることで、ブルゾンやシャツのようにリラックスした着心地を実現。今季はこれをトレンドのリゾートテイストに着こなすのがおすすめです。Tシャツやスニーカーではなく、スキッパーのコットンニットやグルカサンダルで大人のリゾートにコーディネートしたのがラ ガゼッタ1987流。パンツはちょっと珍しいサマーウール素材で、2プリーツ&ベルトレスのクラシックデザイン。春夏ならではのエレガンスをパンツでも表現しています。



素材の“温度感”を揃えて

一格上の春夏スタイルを

「ジャケットはサンタニエッロの中でも伝統的な仕立てにこだわったハイエンドシリーズ「サルトリアーレ」の新作。凝ったチェック柄の生地はリネン+ナイロン+コットン三者混で、しっかりハリコシがありつつ春夏らしい涼感もある表情。ネクタイはシルクリネン、シャツはリネン100%のものを合わせ、素材の“温度感”を揃えたのがポイントです。また、やや広めなジャケットのラペルとマッチさせた襟羽根長めのレギュラーカラーシャツと、9.5cmの太幅&軽快な裏地なし仕様に別注したネクタイは、他店ではなかなか見られないラ ガゼッタ1987のアイコン的デザインです。



機能スーツもあくまで

エレガントに装うのがラ ガゼッタ1987流

春夏のビジネススーツでは定番となりつつある機能系スーツ。サンタニエッロでもそんなニーズに応え、「ヴィアッジャトーレ」(イタリア語で旅人)と呼ばれるシリーズを展開しています。こちらは一見クラシックなストライプスーツですが、非常に軽量でストレッチ性を備え、付属のバッグに畳んで収納できるパッカブル仕様。もちろんポロシャツなどノータイスタイルにも映えますが、あえて白シャツ&9.5cm幅のシルクタイを合わせ、足元もスエードのサイドレース靴でイタリア的エレガンスを加えました。

撮影/若林武志 スタイリング/佐々木 純 構成・文/小曽根広光